2026年5月

「単元」をどう考えるか

渡辺 敦司

 

 次期学習指導要領では、これまで以上に「単元」が重要視されることが確実になっている。一方で、あまりにも単元を中心に考えすぎると、足元をすくわれかねないのではないか――。13日、3カ月ぶりに開催された中央教育審議会の教育課程企画特別部会(企特部会)第15回会合を傍聴しながら、そんな思いが募った。

構造化した資質・能力の育成に必須

 今回の改訂を巡っては、「学力」から「資質・能力」にシフトしたはずの現行指導要領が「道半ば」(2024年12月、中教審への諮問)であることから、資質・能力を確実に育成するには「本時主義」から脱却し、単元など長いスパンで考える必要性があるとの議論が早くから出ていた。特に学習評価は、諮問の実質的な準備作業を担った「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の論点整理(24年9月)で「毎回の授業で3観点全てを見取らないといけないといった誤解」があることを指摘。諮問にも「評価の頻度」が検討課題に入った。

 資質・能力育成に関わる重要な改訂の目玉が、指導要領の「構造化・表形式化」だ。企特部会の論点整理(25年9月)では知識・技能(知・技)と思考力・判断力・表現力等(思・判・表)を「中核的な概念等」に基づく「タテ・ヨコの関係」で可視化して一体的に育成することで「教師の単元づくりを助け、『深い学び』を授業で具現化しやすくする」ことを提言。これらは後の総則・評価特別部会(総則部会)で「高次の資質・能力」(知・技に関する統合的な理解、思・判・表の総合的な発揮)に基づく資質・能力の「深まり」と「一体的育成」の可視化と言い換えられる。

 いずれにしても「どのような力(資質・能力)を身に付けてほしいか」から出発して「授業のまとまり(単元や題材)」を構想し、その上で教科書や教材の扱いと一コマ一コマの授業を創る、というプロセスが学校現場に求められる方向だ。

 そのために企特部会は2月の前回会合で、各教科等ワーキンググループ(WG)に「『高次の資質・能力』を活(い)かした単元計画づくりの参考イメージ」を検討するよう指示。教科書の精選でも「『高次の資質・能力』をつかみ取りやすい授業づくりに資する観点から」のアイデア出しを求めた。さらに今回、構造化・表形式化した指導要領をどういった場面でどのように活用することで授業改善につなげるかの「『高次の資質・能力』等を活かして単元を構想するプロセス」を参考イメージとして示す提案が追加された。

 こうしたイメージが各教科等で示されれば、どのような授業を具体的に構想すれば資質・能力が育成できるのか、経験の浅い教師のみならず、ベテラン・中堅層にとっても改訂趣旨が腹落ちするものになるだろう。  学習評価を巡っても、学びに向かう力を「見取る姿(仮称)」は単元ごとに振り返って評価期間内で「継続的な発揮」を見取るイメージが、総則・評価部会で示されている。

「参考イメージ」だけでは足りない?

 一方でWGが始まって以降、ずっと気になっていることがあった。当初から新しい「見方・考え方」とともに「中核的な概念」が分からない、という疑問が多く出されていた。高次の資質・能力と言い換えられても依然として「理解が難しい」という声とともに「単元目標のようなものと捉えればいいのか」という発言が、教科等を問わず聞かれた。一部委員は理解が不十分なまま、現行指導要領の授業づくりをイメージして高次の資質・能力や個別の内容を検討している節がある――と言ったら失礼だろうか。

 もちろん、種々の参考イメージが示されれば現場にも一定程度、理解が進むことだろう。今回の企特部会でも「―プロセス」の提案に委員から賛同の声が次々と挙がっていた。

 そんな中、教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授は期待を示しながらも「こういった情報提供はあくまでも例示で、同様の学びの質を実現する具体的な指導方法は多様に可能であると強調することが大切だ」と注意を喚起するとともに、高次の資質・能力が単元レベルだけでなく「単元を超えて統合・総合されていくこと」で豊かに育まれることを、どこかで示すよう文部科学省事務局に要請した。むしろ「単元での多様な学びの中に(高次の資質・能力という)共通性を見いだし、多くの単元の学びを統合・総合することで、転移可能な学力になる」という。しかも授業づくりの視野を「1単位時間から単元へ」にとどまらず「単元から内容系統へ」と拡張するよう「世論を導いていく」ことまで提案した。

 これに続く奈須発言にも重要な論点があったのだが、別の機会に譲ろう。いずれにしても文科省が示す資料をしゃくし定規に受け止めるだけでは、次期指導要領も「道半ば」に終わりかねない……というのは杞憂だろうか。

(教育ジャーナリスト)