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2026年9月

1000ページ超、果たしてどう読む?

渡辺 敦司

 

 中央教育審議会の教育課程企画特別部会(企特部会)は9月25日の第18回会合で「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)」の修正を貞広斎子主査(千葉大学副学長)に一任した。10月5日に開催される教育課程部会で正式決定し、パブリックコメント(意見公募手続)と関係団体ヒアリングに付される見通しだ。10年前の前回改訂(現行指導要領)時より約1カ月遅れているが(パブコメは2016年9月9日~10月7日)、12月中の答申(前回は同年12月21日)は動かない模様だ。義務教育段階では27年度の周知期間を経て、28年度からの先行実施期間には目玉である調整授業時数制度も実施できるようになる。現場には1000ページを超える審議まとめを早急に読み解くことが求められる。

本文だけで前回答申の約3倍

 審議まとめ案はプレゼンテーション形式で1055ページに達した。内訳は表紙と目次が各1ページ、第1部「次期学習指導要領の基本的な方向性」が88ページ、第2部「基本的な方向性を踏まえた各教科等の方向性」が310ページ、第3部「資料編」(補足イメージ=いわゆるポンチ絵)が655ページ。本文(第1・2部)はほぼ400ページにわたって横書き2段組みに文字がぎっしり埋まっている。素案に修正を加えても、ページ数に変わりはなかった。教育課程部会への報告を一任された貞広主査は「少し表現を改めるぐらい」(主査の貞広斎子・千葉大学副学長)だとの見通しを述べていたから、同部会提出案もページ数は変わらないだろう。

 10年前の審議まとめはA4形式で333ページだったが、ポンチ絵も多数差し挟んでいた。そこで文字だけで構成した答申の第1・2部242ページと比べてみると、文章量は答申の1ページ分が審議まとめ1段分に近い。今回の審議まとめは、前回答申の3倍を超える計算になる。

  ただし前回は、審議まとめ段階から別にA4版18ページから成る概要「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ(案)のポイント」が付いていた。今回の審議まとめに、概要は付いていない 。

 今回の審議はGIGAスクール構想の実現後ということもあって、傍聴登録者に限ってだが全会合がオンラインで広く公開され、審議段階から周知を図ったのが特色だった。企特部会の登録人数は、論点整理素案が示された第12回(昨年9月5日)で1779人、審議まとめ案が示された第17回(今年8月31日)で2000人を超えた(第18回は2682人)。毎回のように会合を傍聴していたか、ポンチ絵が多用された約100ページの論点整理(昨年9月25日)を熟読した人であれば、1000ページ超えの審議まとめを読む勘所はつかめるだろう。しかし初めて審議まとめに接する人は、どうだったか。

現場には懸念や不安も

 第17回会合では、大部な素案に対して教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授が「図的表現(ポンチ絵)は分かりやすいようで、多義性が高まって混乱を招きやすい。テキストで正確性を期せば、このくらいの情報量だった」と解説。貞広主査も、傍聴者を念頭に「1000ページ超えということで困惑される方もいるだろう」と前置きした上で「(教科等ワーキンググループを含め)300人以上の委員の議論の成果であり、意味のあるものだ」と強調した。告示文まで意識すると、細かいニュアンスまで盛り込む必要があったのも確かだ。

 しかし約1カ月の間、委員もいろいろ反応を聞いたのだろう。第18回会合では、ボリュームが多く読み解きに難儀しているなど現場には懸念や不安の声があることも報告があった。貞広主査は「議論にずっと参加してきた身としては、むしろ必然的な、結果的にこうなったと思っている」と重ねて弁明しながら、社会に向けて「しっかり文科省から発信してほしい」と要請した。

 今夏の「教育展望セミナー」(8月3日)に参加した人は武藤久慶・文科省教育課程課長の教育講演を聞いて、ふに落ちた人も多かったのではないか。文科省が今後作成する概要資料も、当日のプレゼン資料をさらにぐっと分かりやすくした形で示されることだろう。

 それでも本欄で指摘してきた通り、そもそも「統合的な理解・総合的な発揮」自体が理解するのに難しく、ましてや授業実践に移すには困難が伴おう。第18回会合で委員も指摘していたように「教育課程柔軟化サキドリ研究校」の先進事例と見比べながら、さらには教科書が出てから、徐々に新課程授業のイメージがつかめていくのだろう。

 次期指導要領が現行指導要領の「熟成」(石井英真・京都大学大学院教授)だとしても、次期指導要領化の授業実践を熟成させるには相当な時間が必要なようだ。

(教育ジャーナリスト)