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2026年2月

「高次」の資質・能力はどうなる

渡辺 敦司

 

 中央教育審議会の教育課程企画特別部会(企特部会)が2日の第14回会合で「更なる検討の方向性」を示した。これに基づき今後、各教科等ワーキンググループ(WG)で「精査」が本格化することになる。検討事項の詳細は本誌3月号の拙稿に譲るとして、ここでは一歩踏み込んで各WGでどのような見直しが行われるのか展望したい。

 修正案は9WG中4WGで

 検討対象となった14WGのうち20日までに開催された9WGで目標の柱書や見方・考え方、高次の資質・能力に修正案が提示されたのは国語(9日)、情報・技術(13日)、特別活動(16日)、産業教育(20日)の4WGで、それも文言の一部修正・追加にとどまる。他のWG(外国語、理科、算数・数学、芸術、体育・保健体育)で教科の改善策などが議題となっていたのは、個別の資質・能力(学習内容)を検討するための準備作業とみられる。

 もともと各WGが企特部会に報告した「暫定的な整理」のうち高次の資質・能力は、内容と往還しながら練り上げるという前提で議論されていた。その意味でも「暫定」案だったわけだ。

 そうして集めた14WGの暫定的整理を横並びにした上で企特部会が伝達した検討事項は、見方によっては大胆な修正を求めているようにも受け取れる。それを顕著に示すのが、7項目から成る2日段階の事務局案に10日(理科WG)以降挿入された1枚の「その他『高次の資質・能力』での構造化に当たり留意すべきポイントについて」だ。企特部会委員の当日発言を基に、5点を追加で指摘している。

 とりわけ▽単学年ごとに「高次の資質・能力」を示している場合などで、「高次の資質・能力」が個別の内容事項と近接してしまい資質・能力の深まりが示せていないものもあり、そういった場合は複数の「高次の資質・能力」をまとめて水準を上げることも考えられるのではないか▽各教科等の特性を踏まえつつも、各学校段階では一定の共通性を持って見られるよう抽象度の高さを含め一定の平準化が必要――という指摘は、これまでの検討を根本から見直すよう求めるようなものだと言ったら大げさに過ぎようか。

 もともと高次の資質・能力は、昨年9月の論点整理で「中核的な概念等」(中核的な概念の深い理解、複雑な課題の解決)として提言された。それを当面の司令塔役である総則・評価特別部会(総則部会)が10月の第2回会合で「可能な限り現行で既に用いられている言葉を使いつつ構造化する観点から」▽知識・技能(知・技)に関する統合的な理解▽思考力・判断力・表現力等(思・判・表)の総合的な発揮――と言い換え、両者をまとめて「高次の―」と呼ぶことにした。

 しかし、これを受けた各WGでは委員から「『高次の』というのがよく分からない。低次の資質・能力あるのか」といった反応が相次いでいた。

 「中核的概念」の重要性

 中核的概念はビッグアイデアなどとも呼ばれ、コンピテンシー(資質・能力)ベースのカリキュラム改革で重視されている。浅学な筆者の解説より、これを企特部会などで提唱してきた石井英真・京都大学大学院准教授の説明を参照いただきたいが、経済協力開発機構(OECD)のアンドレアス・シュライヒャー局長がよく言う「科学者や歴史家のように考える」という言葉だと、ふに落ちるのではないか。

 石井准教授が繰り返し強調するようにコンテンツ(学習内容)フリーではいけないが、ビッグアイデアの下で個別の内容は「イグザンプル(例)」(教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授)でしかない。入れ替え可能だし、デジタル学習基盤の下では学習者がコンテンツを与えられるだけでなく自分から「取りに行く」ことも容易になる。だからこそカリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)問題に対応するための“less is more”(少なく教えて豊かに学ぶ)が成立する。

 こんな説明は「とっくに知っているよ」という読者も少なくないだろう。しかし文部科学省事務局内ですら認識が徹底されていないのではないかと疑わせる一端が、産業教育WGであった。「専門高校における実践的・探究的な学び(イメージ)」と題するポンチ絵(概念図)の中で個別の知・技や思・判・表が理論と実践の往還によって統合的な理解や総合的な発揮に昇華していくような図を示すと、企特部会委員でもある溝上慎一・桐蔭横浜大学教授が「こういう理解では次期指導要領の新しさは何もない。(担当の産業教育担当室は)教育課程企画室と擦り合わせてはどうか」と問題視したのだ。

 3月中が目途とされる精査で、本当に「スリムで骨太な記載」(更なる検討の方向性)にできるのか。今後各WGで提示される資料と、それを基にした委員間の議論に掛かっている。

(教育ジャーナリスト)