« 2026年3月 | メイン

2026年4月

「オーバーロード」は大丈夫か

渡辺 敦司

 

 次期学習指導要領を検討している中央教育審議会の「各教科等の専門部会等」は次回会合を5月中~6月上旬に設定する教科等ワーキンググループ(WG)が続出し、当初「3月中を目途」とされていた「精査」作業の遅れが顕著になっている。総則・評価特別部会(総則部会)でも27日の第8回会合で、総則についての具体的な議論が始まった。ここに来て改めて心配が募るのは「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)」問題だ。

 

 総則部会では昨年11月の第3回会合でも「総則の構成・記載の在り方」を議題にしている。そこでは▽「第1の3」の後に「児童生徒を包摂する教育課程の編成・実施」(仮称)等の項目を設けるなどして、調整授業時数制度を位置付ける▽児童生徒の学習の自己調整や教師の個に応じた指導に係るものは「第3」にまとめ、「児童(生徒)が主体的に学ぶことができる学習環境の構築」(同)等の項目を設ける▽「第4」のうち「特別な配慮を必要とする児童(生徒)への指導」は、特別なことではなく日常の教育課程編成として行われるよう「第2」に移行して項目を設ける――としていた。

 今回の議題は「関係WG等の議論を踏まえた総則の在り方について(幼児教育WG、特別支援教育WG、特別活動WG、不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程WG、外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議)」。道徳やキャリア教育、高校関係は次回(5月25日予定)に回した。

 文部科学省事務局(教育課程課)の提案によると、まず学級経営については特活WGの議論を踏まえ、信頼関係や人間関係の醸成の先に目指す姿を分かりやすく示す。生徒指導も、改訂生徒指導提要の「発達支持的生徒指導」を踏まえた示し方とする。

 特別支援でもWGの議論を踏まえるとともに、学級全体の指導方法や環境整備の工夫により全ての児童生徒の学びやすさを確保する在り方を適切に位置付け。不登校関係で特別の教育課程の配慮事項を追記するなどし、「特才」(21日のWGで示した略称)は「まずは通常の教育課程における指導の工夫や支援により対応を行い、その上で特別な教育課程の編成を検討するといった多層的な支援の考え方」を示す。

 外国人児童生徒等を巡っては、単なる日本語能力の補充ではなく「教育課程全体を通じ、日々の学習や、多様な人々との個性を生かした協働に必要な資質・能力を育成する」という基本的な考え方を記載。幼小接続ではスタートカリキュラム(5歳児と小1のカリキュラムの総称)を含む「架け橋期」の在り方や作成・改善過程の留意点を示す方向だ。

いずれも、まだ具体的な記載が固まっているわけではない。中教審では考え方や方向性だけ決めておいて、具体的な記述は文科省告示に任せる可能性もある。

 

 意見交換の中で発言した教育課程部会長の奈須正裕・上智大学教授は、まず第3回会合の提案が「ずっと気になっている」と明かし、児童生徒の発達の支援が第4に位置付けられる構成は「もう合わないのではないか」と問題提起。子どもという存在をどう捉え、多様性をどう包摂するかを「1の終わりか2の前」に据えるよう主張した。

 らに今回の提案に対しても、第4の2から第2に移行するとした「特別な配慮を必要とする児童生徒への指導」と、第3にまとめるとした「個に応じた指導」(現行は第4の1の⑷)は「別なのか。すべての子どもは多様なのではないか。通常でやれる人たちと、やれない人たちという二分法の考え方では、多様性の包摂は無理ではないか」と指摘した。

 昨年9月の教育課程企画特別部会(企特部会)論点整理は柔軟な教育課程として、学校として編成する「1階」に加え、個々の児童生徒に着目した「2階」建てにするよう提案。その際には1階部分で包摂性を高めるとしており、各WG等の議論でもその必要性は強調されていた。今回の議題は、主に2階部分に関わる話だ。しかし奈須教授の提起によって、次期指導要領の三つの方向性の一つである「多様性の包摂」自体が必ずしも徹底されていないことが浮き彫りになった。

 戸ヶ崎勤・埼玉県戸田市教育長は「部分最適の集合が必ずしも全体最適にはならない」と述べ、指導要領本体と解説の役割分担を図るよう求めた。これは、今回の総則論議にとどまらない話だろう。学習内容や教科書を精選する論議は、教科等の各WGでもさっぱり具体化していない。

 次期改訂では「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)」解消が課題とされたからこそ、論点整理でも方向性の一つに「実現可能性の確保」を掲げたはずだ。このままでは解説なども含めてオーバーロードが深刻化するのではないか、と心配が募る。

(教育ジャーナリスト)