Vol.19:小学校高学年の教科担任制考2

小学校高学年の教科担任制考2


 令和3年度の新学期がスタートしたとき、都内は3回目の緊急事態宣言が発令されていた。 
 大好きな映画鑑賞をする機会も減り、書物を読み返す時間が増えた。その中の1冊に、「私の大好き」が象徴されている『前田敦子の映画手帖』(朝日新聞出版、2015)がある。彼女が、どれだけ映画が好きかを垣間見ることができる。あらゆるジャンルを鑑賞して自分の映画観をエッセイとして著したものだ。学ぶべきことは、自分の「好き」が結集されていることである。
 さて、小学校では、2022年度からの「小学校高学年の教科担任制の導入」に向けて、どこまで準備が進んでいるのだろうか。都内の教科担任制実践校の訪問や支援からの状況をお伝えしよう。


 大規模校の教科担任制の導入
 この小学校は、昨年度末に区から指定を受けて、4月当初から教科担任制をスタートさせていた。スタート2週間目に学校参観をさせてもらった。驚いたことに全学年で教科担任制にシフトして動いていた。空き時間に教務主幹と研究主任に助言ならびに話を聞いた。
 その際、私は「教科担任制の成否は、各教科の授業改善によるもの」と「どのようにして教務が時間割等の編成をしていけばよいか、一目でわかる資料を作成すること」「研究の方向性として、実施後の先生方の意識調査、ならびに児童にとって教科担任制はどのように映っているか、アンケートなどで分析すること」を提案して後にした。

 東京都は理科と体育での教科担任制の実施に向けた取組を始めているが、実施までのアプローチが的確な学校経営を基軸にした取組と同時に、教務の効率的・効果的な運営の在り方が重要である。
 課題がないわけではない。それでも、スタートして動きながら改善を加えていく学校態勢が教職員の意識を高めている。

 教科担任制を実施してのアンケートから
 教科担任制のメリット、デメリットについて、実施したアンケートから特徴的な声をまとめてみた。
 ◇「教科担任制のよさ」
  ①教材研究にかける時間が効率的にできる
  ②教科担任制の教科について、より改善した姿で授業ができる
  ③子どもたちから「新鮮さ」の声が少なくない>
  ④児童理解として一人一人の状況を話す機会が増えた
  ⑤学年経営の充実感がある
 ◇「教科担任制の課題」
  ①学年での行事を推進していくための時間が足りない
  ②朝の時間にゆとりができない
  ③2時間連続の授業がとれない
  ④行事や時間カットなどでの調整に困難性を生じる
  ⑤学級差を乗り越える必要がある。学習規律などの一貫性を考える必要性がある

 小学校では全教科を教えることで、児童を理解して総合的に学びを評価していた。それを大きく転換する時期が、2022年度からの導入と捉えたい。
 今、教科担任制について、共有化や当事者意識を高めることを全くしていない学校が存在する。「なんとかなる」からの転換を急ぐ必要がある。管理職のマネジメント力不足の象徴として教科担任制の導入があげられてはならない。「待ったなし」である。 

【ペンネーム映画を教育にTK】

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