Vol.21:「いろはかるた」の思い出

「いろはかるた」の思い出


 あれこれ雑物が増えすぎたため、ときどき整理している。最近、書架を整理していたら、神田神保町の研究所に勤めていた頃、TK氏から「孫に!」といただいたかるたが出てきた。

 「いぬもあるけばぼうにあたる」&「むりがとおればどうりひっこむ」など『江戸いろはかるた』(金の星社)、「いっぽんあしじょうずにおひるねフラミンゴ」&「むねをたたいてゴリラのパパがうっほっほー」など『かわいいたのしいどうぶつカルタ』(永岡書店)、「いそいでばんとうたべんとうー」&「むずかしい本はないようがわかんないよう」など『かいけつゾロリのおやじギャグかるた』(ポプラ社)と、当時、人気のカルタばかりである。
 もう孫たちは見向きをしないので捨てようかと思ったが、妻の「孫が、子ども(や孫)と遊ぶことがあるかもしれないから取っといたら!」と言うので、元の所に戻しておくことにした。

 ところで、「江戸かるた」とわざわざ断っているので、「他にもかるたがあるのだろうか?」と、疑問が湧いた。
そこで、調べたところ、代表的なものに「江戸かるた」、「京かるた」、「中京かるた」があり、その他にも郷土の特色あるかるたが各地にたくさん存在することがわかった。
内容や表現もさまざまであるが、現代仮名遣い、偏見や差別などに配慮して少しずつ変化しているようである。
「江戸かるた」、「京かるた」、「中京かるた」について、共通しているもの、異なっているものについて、いくつか紹介してみよう。

●異なっているもの
「い」
・「犬も歩けば棒に当たる」(江戸)
・「一寸先は闇」(京)
・「一を聞いて十を知る」(中京)

「ね」
・「念には念を入れ」(江戸)
・「猫に小判」(京)
・「寝耳に水」(中京)

「も」
・「門前の小僧習わぬ経を読む」(江戸)
・「餅は餅屋」(京)
・「桃栗三年柿八年」(中京)

●一部共通するもの
「は」
・「花より団子」(江戸・中京)
・「針の穴から天を覗く」(京)
「ち」
・「塵も積もれば山となる」(江戸)
・「地獄の沙汰も金次第」(京、中京)

●全て共通するもの
 (江戸)と(京)と(中京)に共通したものは見あたらなかった。

 「いろはかるた」について、ほんの少し調べただけであるが、物の見方・考え方、文化や価値観などの微妙な違いをほんの少し実感することができた。  子どもの教育に関わる身として、子どもの多様性や生き方、価値観、希望などについて、しっかりと捉え理解し、その子にとって真に意味のある指導・支援に努めたいと改めて強く思った次第である。


(教育調査研究所研究部長 小島 宏)

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