Vol.44:夢を描く高校生(2)―高校生の座談会―

まお:本日は、昨年ボストンスタディプログラム(以下、ボストンSP)に参加した三人で座談会を開きます。参加するのは、まお、りんか、ちなつです。このような、高校生の声を届ける企画に参加できることを非常に嬉しく思います。司会を務めるのはまおです。よろしくお願いします。ではさっそく始めます!

◆ボストンSPに参加した動機は?
まお:はじめはボストンSPに参加した動機についてです。私から先に。
 私は留学に興味があったり、多くのことに興味があるのに自分が人生をかけてやりたいと思えるようなことがなかったりしたため、視野を広げたいと思って、このプログラムに参加しました。皆さんは、どうしてこのプログラムに参加したのですか?

りんか:私は、自分を変えたい、自分を好きな自分になりたい、と思い参加しました。
 その理由として、自分に自信がもてず意見を言うことや何かに挑戦することが怖いと感じていたり、夢がもてなかったりするのは、物事をすぐに決められない自分の性格のせいだと思い、自分に嫌気がさしていたからです。
 ボストンSPの説明会で、参加した先輩の声の中に「自分を変えられた」というものがあり、もしかしたらいい夢が見つかるかもしれない、自分も変われるかもしれないと思い、参加してみることにしました。

ちなつ:私が参加した理由は二つあります。
 一つ目は、高校に入学して環境が変わり、自分に対して無力感を感じることが増えてしまい、そんな自分を変えるために新しいことにチャレンジしたかったからです。
 二つ目は、このプログラムで将来の進路についてアドバイスを得たかったからです。去年の説明会で、当時の私にぴったりだと思い参加しました。

まお:そうだったんですね。お二人とも新たなことに挑戦して、自分を成長させたいと思っていたことがわかります。

◆実際に参加してみてどうだった?
まお:実際に参加してみて、何を得ましたか?

ちなつ:私は研修を通して、自分の興味のあったことから、興味をもつことが少なかった分野まで幅広く、新しい知識や価値観に出会うことができました。それまでは、自分に合うものと合わないものを分別しがちでした。
 例えば、パンフレットのデザイン制作を始めたとき、私は芸術やデザインにあまり興味がありませんでした。でも、やってみると、デザイン制作はとても楽しくて、またやりたいと思えるものでした。

 そこから、最初から決めつけないでやってみる楽しさと、その必要性に気づくことができました。
 そして、将来の夢については、準備段階で自分が本当にやりたいことってなんだろう、とそれまでにないくらいよく考えました。興味のある分野は見つけていたけど、そこに進もうと決心できていませんでした。研修を通して、それまで自分の意見と向き合ったり、自分を肯定したりすることができていなかったことに気づかされました。
 最終的に、講師の先生の励ましやボストンブリッジの講師からの情報を受けて、将来携わりたい分野をはっきりさせることができました。また、たくさん迷っていいと学んだことで、肩の荷がふっとおりる気がしました。

 このプログラムで、自分のことが前よりも好きになれた気がします。貴重な時間でした。まおさんはどうですか?

まお:私は、このプログラムを通して、自分の興味をさらに深めることができたと同時に、ぼんやりとですが将来のプランや理想像をもつことができました。4日間のライブ研修はもちろんおもしろかったですが、仲間と一つの作品を作り上げたことが何よりもかけがえのない経験だったと思います。
 その過程で、先を見通す力や論理的に物事を考える力が身についたと感じていますし、共同で何かを作るということの創造性に魅力を感じるきっかけにもなりました。

 また、講師の先生方の発する言葉がすごく心に響いて、私が悩んでいたことを解決できました。解決という言い方はあまり合わないかもしれませんが、悩みを受け入れてくださって、私がこれから生きていくうえで大きな支えとなるような言葉をたくさんかけてもらいました。そして自分の知らない世界をたくさん見せてくれました。
 そんな人間的に憧れる人たちに出会えたのがこの研修の一番の収穫です。

りんか:私は、このプログラムを通して、ポジティブが大事だと気づきました。それは、多くの知識や経験をもった方々の考え方や価値観に触れて、そうあることが、輝く自分や身の回りの環境、人間関係を作るとわかったからです。
 特に、講師の先生に挑戦することは怖くないかと質問したときに、挑戦することは怖いけど逃げてはいけない、挑戦することをポジティブに捉えるべき、と仰っていたことがポジティブであることの大切さをよく気づかせてくれました。

 その気づきによって自分の考え方をいい方向に変えることができました。はじめ、私は自分が好きな自分になりたい、と思っていましたが、今の自分を受け入れてどんな自分も好きでいる、そのうえでもっと好きな自分になる、ということが私が思う魅力のある人になる方法だとわかりました。
 なので、今はもっと好きな自分になるために、たくさんの知識をもっていたり、積極的に挑戦したり、自分の得意なことをもっている人になれるようにがんばっています。

 また、夢が決まらないのは自分の決断に自信がもてなかったからで、迷っていろいろ経験して、自分の本当にやりたいことを見つけるのもいいんだなと思えることができました。


まお:私は人間的に憧れる人たちに出会えたという収穫がありましたが、ちなつさんは自分を肯定すること、りんかさんはポジティブでいることの大切さに気づくことができたのですね。これらは、学校の授業を受けているだけでは気づくことができなかったことだと思います。

◆どのような夢を追っていきたい?
まお:このプログラムの経験を生かしてどう夢を追っていくかお聞きしたいです。りんかさん、お願いします。

りんか:たくさん迷って経験することが大切だとわかったので、何か行動を起こすときはもちろん、ふだんから、さまざまな知識を蓄えたり経験したりしていきたいです。それは常に挑戦するということであって、ポジティブでいることが大切になってきます。このプログラムを通して得た気づきを大切にしていきたいです。

ちなつ:それまで「自分で考える」「自分の気持ちを大切にする」ことができていなかったと気づきました。なので、今、自分の考えをもって行動するようにがんばっています。
 また、講師の先生方とのコミュニケーションやボストンの高校生との交流で、英語学習への意欲が高まるきっかけになりました。これまでよりも、英語での交流が好きになりました。

まお:他人とのつながりの大切さを実感しているので、自分の夢を追っていくために、このボストンSPで得た人間的に憧れる人たちとのつながりを大切にもち、他人と対話することをずっと続けていきたいです。現に、そういった中で自分がやりたいことがはっきりと見えてきたように感じています。

 ボストンブリッジの講師とは進路について悩んでいたときに何度もメールをしましたし、そこでの対話が自分が進路選択をするうえで大きな判断材料になったりしました。また、ボストンの高校生と交流する機会があったのですが、そのうちの一人と仲よくなって、今でもずっとチャットをしていて、今度日本に来るそうなので、一緒にプリクラを撮ろうと話しています。その子と話す中で自分自身の世界も広がったと感じています。

 このようにすばらしい人と人とのつながりができたので、皆さんにもぜひボストンSPで、かけがえのない経験をしてもらえたら嬉しいです。

◆日本の教育をどう思う?
まお:この座談会の締めくくりとして、最後に、日本の現在の高校教育と大学教育について、私たちがどう思うか、また将来的にどのような希望を抱いているかを話しましょう。

りんか:私は、テストや課題が多く、やりたい活動ができないと感じたことがあります。しかしそれらを行わないと、学びたい勉強ができる大学に入ることはできません。大学入試で、学力の基準だけではなく、さまざまな経験や個性を評価できるような選抜方法を採用してほしいと思います。それにより、大学に多様な学生が集まるきっかけにもなるのではないでしょうか。

まお:私の考えとしては、知識は必要ですが、本当に大切なものは知識ではないというふうに思っています。そういう力を生徒に合わせて伸ばしていく場所が、「学校」なのではないでしょうか。高校でも大学でも、学校が知識を詰め込むだけで、生徒から考える時間を奪うような場所になってはいけないはずです。

 また、考えを発信する場として、生徒同士で教え合ったりする場も必要だと思います。生徒が主人公になる、そういう場が必要です。それがあれば、もっと生徒たちは学びたい分野が広がり、「履修したい科目」というものがはっきりしてくるでしょう。しかし日本ではまだ生徒が自由に科目を選択する機会が多く与えられていません。そのような制度自体も変えていく必要があると思います。

ちなつ:日本の高校の学びについてですが、いろいろな活動が、受験のため、勉強のため…に比重を置きすぎている印象を受けます。今、必要とされているグローバルな人材育成のためには、もっと多様で自由な学びが必要なのではないでしょうか。

 次は、高校生に課せられた進路選択です。高校1年生の時点で行う文理選択は進路に関わる大きな選択ですが、私は「本当にこれでいいのか」と最後まで悩みました。
 その後、ボストンSPで学んだアメリカの大学教育が私を驚かせました。アメリカの多くの大学が学部で行うリベラルアーツ教育で、学生は、高度な専門性を学ぶよりも広く深い思考力と理解力を身につけることが主力で、高度な専門分野は学部を卒業したあとの大学院(専門スクール)で学びます。
 日本ではそのような選択はできませんが、まおさんが言っていた教え合う場を、将来の夢や考えを共有する場としても活用すれば、新しい価値観に触れたり、自分の気持ちを言葉にしたりするいい機会になると思います。

(文責:ボストンブリッジ代表 蝦名 恵)

まなびの小径

コピーライト

  • Copyright 2009 Japan Educational Research Institute. All rights reserved. Designed by TypePad