Vol.53:あなたも「ひきこもりよ!」

 ひきこもりの人が多いと、新聞やテレビで話題になっている。
 内閣府が公表した2022年の調査(推計)によると、15~64歳でひきこもりの人は、全国に約146万人もいるそうである。
 その調査によると、そのうち女性の割合は、15~39歳は45.1%、40~64歳は52.3%で、増加傾向にあるということである。

 そこで、ひきこもりの女性当事者同士が気兼ねなく悩みなどを語り合う会合が、各地で開かれるようになっている。そして、その語り合いは、当事者にとって安心できる「居場所」になっているそうである。

 一般社団法人「ひきこもりUX会議(東京)」はその一つで、「語り合い」を行っている。参加者の声を聴いてみよう。

○参加者Aさん:「苦しむのは自分だけじゃないと知り、ほっとした」
○参加者Bさん:「厚労省は、ひきこもり期間を半年以上としているが、私は、この定義に当てはまらないけど、自分はどう考えてもひきこもりだ」
○参加者Cさん(38歳):「幼少時から母親に怒鳴られ無視されてきた。高校時代からひきこもりを繰り返してきた。辛い、死にたいと感じていた。(中略)公的な支援窓口を訪ねても、話したくない経験を聞かれるので辛くなり、頼らなくなった」
○UX会議の代表理事林恭子さん:「辛い状況を周囲に理解してもらえない女性は多い。語り合いを行う際は、状況の異なる当事者の目線に立った内容にしてほしい」
(注:UXは、ユニーク・エクスペリエンスunique experienceの略、意味は「固有体験」)

 各地の様子を見てみよう。
 川崎市「男女共同参画センター」は、3か月に1回「ひきこもり女子会」を開いている。北九州市「北九女子一歩会」では、毎月会話会と、手芸や体操による交流会を進めている。「しんどい女性が一歩を踏み出すきっかけになって欲しい」運営者西本祥子(72歳)。

 さて、子どもの場合はどうだろうか? 不登校の子ども、ひきこもりの子どもはいないだろうか。つい、「~~しましょう」とか、「なぜ学校に来られないの?」「どうしてひきこもっているの?」、「しっかりしなよ」などと言いがちであるが、大人目線で問い詰めるのは逆効果だそうである。

 学校の先生方には、子どもの立場に立って、「不登校」や「ひきこもり」の要因を推察し、それを取り除く支援・工夫をすることが求められる。
 何よりも効果のあることは、先生や友達とのおしゃべりや友達同士の楽しい時間を過ごせるようにすることである。

 私は、1週間に1回程度しか外出しないので、家族から「あなたもひきこもりよ!」と言われているが、辛くもないし、困ってもいないので大丈夫である。
 友達は少ないが、あれこれ駄文を書いて、知り合いの方々に勝手に送りつけて自己満足している。


(教育調査研究所研究部長 小島 宏)

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