Vol.47:「PDCAはもう古い」は、とんでもない!

 PDCAは、アメリカの経済学者W・エドワーズ・デミングが、品質管理のために1950年代に提唱したもので、政策や事業、品質管理をP(Plan計画)→D(Do実行)→C(Check確認・評価)→A(Action改善)のサイクルで「計画から見直しまで一貫して行い、さらにそれを次の政策や事業、品質管理に生かそうという考え方」である。

 学校では、学校運営や教育活動(授業)の効果的な展開に、よりよい改善・充実に向けて、PDCAサイクルを活用してきた。
 現在、学校においては、PDCAをRPDCAやPPDCAなどに改善することが提唱されている。

★RPDCAは、PDCAの前にR(Research調査・研究)の段階を設けて、Pをいっそう確かなものにしようと発想されたものである。

★さらに、授業では、PDCAの前にP(Problem問題)を位置づけて、P(問題)→P(解決の見通し・計画)→D(解決の実行)→C(評価・振り返り)→A(改善)として、PPDCAが取り入れられている。 
ところで、最近、「PDCAはもう古い」と、さまざまなものが提唱されている。PDCAをよりよく活用しようとする創造的な取組を否定するものではないが、個人的には、「PDCAがもう古い」のではなく、「PDCAの変異株」程度のものだと考えている。
                                                                                                                                                                                                            では、その中のいくつかを紹介する。

 <その1>DCPA
 Do(実行)→ Check(確認・評価)→Action(改善)→Plan(計画)と今現在していることから始めると、PDCAの順番を変えたものである。PDCAが周期的に繰り返されるのであるから、DCPAになることも当然にある。東京都では教育課程は前年度に編成・P(計画)し、新年度はD(実行)から始まることになっていて、目新しいことではない。

 <その2>OODA
 もともとのPDCAを、Observe(観察)→ Orient(仮説構築、方針決定)→ Decide(意思決定即実行計画)→ Action(実行)と、情報収集の手薄を考慮するとともに、実行までのスピードを重視して、アレンジしたものである。

 <その3>STPD
 See(見る、現状把握)→ Think(考える、どう考えるか)→ Plan(5W1Hで計画する)→ Do(実行する)としたもの。PDCAのC「評価」のないことが短所であるという批判がある。

 *注:5W1Hとは、When(いつ)、 Where(どこで)、 Who(誰が)、 What(何を)、 Why(なぜ)、 How(どのように)のこと。


 <その4>Preparation(計画に要する時間を省略し準備)→ Do(実行)→ Review(確認する・評価)とした。ITの発展により社会はVUCAの状態なのに、P(計画)に手間がかかりすぎるので、時間やコストの削減に対応したものである。これも、PDCAの変異株であるといえよう。

 *注:VUCAは、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略で、変化の予測のしにくい状態のこと。

(教育調査研究所 小島 宏)

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