Vol.40:小学校高学年の教科担任制考5 ―学校規模に応じた教科担任制の成果と期待―
感染症対策も次の波に向けての新しい局面に入りました。9月には、教員の不祥事なども新たに報告され、教員の資質が問われています。
映画『あきらとアキラ』を鑑賞しました。銀行の融資の在り方と行員の生き方を考える、社会問題を題材にした映画です。利益優先か、人間としていかに生きるか、瀬戸際の判断が随所にありました。
私は、学校支援の際に、「コロナ禍で、たくさんの会社が倒産や廃業にある現状を理解し、そのうえで、子どもたちの指導をしていきましょう」と呼びかけています。単なる社会問題ではなく、当事者意識をもって、今私たちの眼前で起きていることへの認識をもつよう強調しています。
本稿では、学校規模に応じた進捗状況を報告いたします。
●小規模校の実践【和歌山県田辺市立新庄第二小学校】
9月のセミナーでは、次の2点が特徴的でした。
1点目は、1学期に行った教師・児童に対するアンケートを分析したうえで、2学期を進めていることです。今回は近隣中学校長に対して、Q&Aで質疑の時間を多くとりました。中学校の実践を共有化することの収穫は大でした。
2点目は、課題はあるものの、授業力ならびに指導の手立てがより鮮明になったことにより、教科担任制の理解度が高まったことです。また、全教職員の意識改革が進み、誰もが教科担任制の指導ができる素地ができました。
令和5年2月8日に研修報告会を予定しています。
●中規模校の実践【東京都江戸川区立西小松川小学校】
高学年の教科担任制については、教員相互の関わりが強くなり、授業力の向上が鮮明になりました。また、低学年の交換授業の在り方も、同一教科での系統性を意識した取組をすることにより、安定的な授業展開ができてきました。
●中規模校の実践【東京都荒川区立第二峡田小学校】
第3学年からの理科、社会の教科担任制の取組は、教科の質向上の高まりが見えたことと、児童の学びの姿がよい方向に向かっていることが明らかになりました。特に、理科に関してのポイントが高くなり、成果として捉えることができます。
●大規模校の実践【東京都江戸川区立第四葛西小学校】
9月に、5年の社会科、4年の算数の研究授業を実施しました。この段階で特徴的な3点をお伝えいたします。
1点目は、学年としての結束と授業力を高める手立てを講じていたことです。事前授業では、学年の授業参観・指導の徹底で、全教職員の資質向上を高めています。
2点目は、教科部会が機能していることです。協議会なども教科部会としての意見や質問が多数出て、全教職員で高め合う姿が顕著です。
3点目は、学力向上です。文部科学省の学習状況調査の結果として、それぞれポイントが高くなり、2年目の成果として飛躍している点があります。
令和5年1月31日に研究発表会を開催予定です。
いずれの学校も「加配なし」です。今ある教員体制でいかに教科担任制を機能させ、学力向上につなげていくか、道筋を明らかにしていることが特徴的です。
今後実施する学校はぜひ、学校に足を運んでもらいたいと思います。
【文責:明海大学客員教授 釼持 勉】