Vol.50:小学校高学年の教科担任制考8

  2023年の夏を迎えていますが、感染症の第9波が来ているとの話も出ています。経済活動を回し社会生活を豊かにしながら、感染予防をしていく時代でもあります。

  過日、是枝裕和監督の映画作品『怪物』を鑑賞しました。
  子どもをめぐる学校生活の中で起きていることを、子ども相互のいじめや、校長をはじめとする教職員、子どもたちの親などを描写することにより、それぞれが「怪物」なのではないかと思わせ、今の時代を象徴した作品になっています。
  教育関係者のみならず、考えさせられる映画です。

〇校長のマネジメント力を発揮する場(東京都調布市立第三小学校長 秋國光宏校長)

  現在、東京都教育委員会教科担任制指定校として研究を進めている東京都調布市立第三小学校は、校長の教科担任制に対するリーダーシップが発揮され、前年度から教科担任制を導入し、教職員へ働きかけています。
  教科担任制の四つのメリット(児童の学力向上、多面的な児童理解、中1ギャップの解消、教師の働き方改革)を理解し、学校規模に応じた教科担任制の在り方を検討・導入しています。
  そして、道筋を明確にして、学校ができることを着実に推進しています。

  自治体によって温度差があるうえ、各学校でもさらに差異があるのが教科担任制です。校長のリーダーシップを発揮できず、導入への道筋を描けない校長が少なくありません。

  学校経営の方向性として、学力向上を取り上げつつも教科担任制に舵を切れないのはどうしてでしょうか。
  加配教員がいないから、指導力不足だから、教員が足りないから、学級経営が不成立だからと、さまざまな理由が取り上げられていますが、校長のマネジメント力を発揮できないことが、最大の理由ではないかと捉えることができます。
  施策としての教科担任制の認識に乏しいのが実情ではないかと思われます。実施していても、理科・社会型(年間指導時数が近い)のみの実施で、教科担任制としてのビジョンが描けていないのです。

  調布第三小学校では、教科担任制の更なる推進を図るために、全学年で創意工夫し、板書型指導案を活用した取組により、一体的な方向性を提示して進めています。
  絶えず、教科担任制のあるべき姿を想定して、各教科の授業改善を目指しています。

  2023年からの3年間の研究校です。今後も、教科担任制が機能する学校づくり、また調布市教育委員会のビジョンにも期待できます。

【文責:明海大学客員教授 釼持 勉】

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