Vol.45:小学校高学年の教科担任制考6 ―大規模校な教科担任制(加配なし)の実践―


 先日、インド映画『RRR』を鑑賞しました。映画館は予想以上の観客とともにストーリー展開の速さ、主演男優のダンスパフォーマンスを組み入れて、観客を熱狂させる流れには驚くばかりでした。今月は『BANG BANG』が始まっています。観客釘づけの冒険とロマン溢れる映画になっています。
 これまでどうしてインド映画を観なかったのかと反省しきりでした。初めての体験を味わい心地よい気持ちになること間違いありません。
 学校現場が「心地よい居場所」になっているだろうかと、頭の中では児童・生徒の側に立った教育の在り方を模索していました。

【東京都江戸川区立第四葛西小学校の実践】
 過日(令和5年1月31日)、研究発表会が開催されました。区外、都外からの参加も多く、教科担任制の機運が動いていることを実感しました。実践の内容は次の通りです。

⑴ 研究主題
 『小学校(大規模校)における教科担任制の導入と効果的な運用―多面的な児童理解と教員の指導力の向上を目指して―』

⑵ 実施形態
 教科担任制の実施学年は第3学年から第6学年、低学年は授業交換を進めています。教科担任制の担当教科は、新年度になってから学年で話し合い決めていきます。指導教科、指導学年の固定化をしない、小学校全科としての資質を保つことを前提にしています。低学年の授業交換は、国語と算数で実施(1学年は2学期から開始)して、第3学年からの教科担任制につなぎます。

⑶ 教科担任制の成果
①学力向上
 各担当教科を中心にして授業改善に取り組んだ結果、「授業がよくわかる」「授業が楽しい」と肯定的な回答が96%を超え、教員の担当教科を変えずに指導した学年では、全国学力・学習状況調査の結果が向上しました。記述式正答率は大幅に向上しました。

②児童理解の深まり
 児童理解度が高まり、学年力の向上につながりました。児童の自由記述にも「わからないことはすぐに教てくれる」「自分の得意、不得意をわかってくれている」など教員と児童相互に関係性が深まり、hyper-QUの「学級満足度尺度」の結果は全国平均を20ポイント以上上回りました。

③中1ギャップ
 卒業生のインタビューなどでは、多くの教師に教えられることへの戸惑いや不安はほとんどありません。ただし、中学校の教えるスピードに慣れるのに不安を募らせています。

④教師の働き方改革に資する
 授業準備にかかる時間的な短縮ができ、授業改善が大きく図れる、指導案や教材等の資料は、学年で共有することで効率化が進み、評価に対してもより適切化がスムーズな運営になりました。

 大規模校の教科担任制では、四つの果たすべき役割がほぼ達成でき、教師の資質向上にも貢献できる施策であると再認識できました。全国の小学校が第四葛西小学校の実践から学び、その成果を発揮して「児童にとっての教科担任制」にしていきましょう。



【文責:明海大学客員教授 釼持勉】

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