Vol.46:教師の個別最適な学びと協働的な学び

 最近、「教師の個別最適な学び、協働的な学び」ということが言われるようになった。
 これは、文部科学省「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針」(令和4年8月31日改正、以下「指針」という。)の内容を受けたものであろうが、初めて接したときに疑問をもった方も多いと思われる。
 例えば、「なぜ教師の学びが児童・生徒の学びと同じなのか?」、「教師の個別最適な学びや協働的な学びはどのように進めるのか?」などである。

 そこで、ここでは次の2点について、指針等の内容を踏まえて再考してみたい。

1 教師の学びと児童生徒の学びについて
 このことについて、指針には次のように述べられている。

 「教員等の資質の向上を図ることは、児童生徒等の教育を充実することに他ならない。児童生徒等の学びと教員等の学びは相似形となることが重要であり、個別最適な学び、協働的な学びの充実を通じて、『主体的・対話的で深い学び』を実現することは、児童生徒等の学びのみならず、教員等の学びにもまた求められており、児童生徒等の学びのロールモデルとなることが期待される。」

 すなわち、教師には、職責遂行上の義務としての教員研修だけではなく、例えば、今後の職務や教職生涯を見通した主体的な学び、教師同士や家庭・地域・関係機関等との連携・協働を通じた学びなどの「主体的・対話的で深い学び」が求められているのである。

2 教師の個別最適な学びと協働的な学びの推進について
(1) 新たな研修制度の概要

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(2) 各教師に求められること

 各教師には、自らの成長段階に応じた資質能力を身に付け、さらに、それぞれの個性や長所の伸長を図ることが求められる。そのためには、自らの職務の課題や研修履歴等を振り返るとともに、所属都道府県の教員育成指標を俯瞰し、自らの強みや弱み、今後伸ばすべき能力、学校で果たすべき役割などを客観的に把握して目標を具体的に設定する必要がある。
 その際、校長等との面談等において、適切な目標設定や研修受講等について相談することが求められている。

〔参考〕東京都教育委員会「東京都公立学校の校長・副校長及び教員としての資質の向上に関する指標」

「東京都公立学校の校長・副校長及び教員としての資質の向上に関する指標」の改定について|東京都教育委員会ホームページ (tokyo.lg.jp)

(3) 研修実施者等に求められること
 各都道府県の教員研修実施者である教育センター等には、指針に示される研修の精選・重点化や系統化、研修成果の確認方法の明確化等のほか、例えば、指標の各項目と関係研修講座を記号番号等で紐づけるなどして教師が選択しやすくするなど、きめ細かな対応が求められる。

 以上は、多様な研修機会を提供している大学や学会・研究会等の民間研究機関の研修においても同様であり、これらを含めた教員研修の充実と活性化が期待される。



(教育調査研究所主任研究員 守屋一幸)

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