Vol.54:小学校高学年の教科担任制考9

 映画『こんにちは、母さん』を鑑賞しました。吉永小百合さんの123作目であり、「これからが母さんの出番」の言葉通り、生きがいをもって生きていくことの重要性を再認識しました。
 彼女は、北の3部作(『北の零年』『北のカナリア』『北の桜守』)で「映画女優を最後に」という時期もありました。今回123作目に出演し、「〈1・2・3〉の次はもう少し映画女優をやっていこう」と、新たな決意をしたようです。嬉しい限りです。

 さて、令和5年8月28日に中教審特別部会から緊急提言が発表されました。働き方改革の一環として「小学校高学年の教科担任制」の前倒しも盛り込まれました。このことによって、全国の小学校が教科担任制のメリットを実感して、働き方改革に資する道筋を鮮明にしていくことが求められます。

新宿区教育委員会の取組
  新宿区教育委員会では、令和5年度から新宿区教育委員会教科担任制検討委員会を設置し、2校のモデル校を導入し、あるべき方向性を提示・推進しています。モデル校2校は、中規模校(学年2学級)と、小・中規模校(6年1学級、5年2学級)で、課題を抱えながらも、年度始めから学校としてのビジョンづくりに徹底して取り組みました。
 両校ともに、児童の満足度は高く、「児童にとっての教科担任制」を展開していることがうかがえます。

 9月には校長会を通して『教科担任制スタートブック』(釼持勉著)を読み込み、各校が規模、教員の状況に合わせてビジョンの作成と教科担任制の在り方を検討し、11月の教務主任研修会でのモデル校の報告と併せて、各校の推進状況について支援していくこととなっています。

 ここでのポイントは、3点あります。

①単なる実施教科の時数合わせだけを優先することがないようにしていくこと

②校内研究と教科担任制の推進を合わせて研究の方向性を検討していくようにすること
 1教科の研究に陥ることなく、教科担任制実施教科の授業改善に資する流れを意識した取組をしていくこと

③時間割の作成に合わせて校務分掌などの組織改革をしていくこと
   教務主任一人で時間割を作成するのではなく、学校行事に合わせて担当者が時間割を作成できるようにしていくこと(運動会、水泳指導、文化的行事等)


  都内の状況から考えると、新宿区教育委員会の教科担任制への段階的な取組は、最終的には令和6年度に向けての全区的な取組として最適な時期での働きかけといえるでしょう。
 こうした取組が次年度の事業展開を前倒しとして教育委員会が積極的に動いている状況を、他区市の教育委員会も見習ってもらいたいと考えます。

 「人的配置なし」前提で、教科担任制の意識改革がなくてはなりません。小学校教員の誰がどの学校に異動しても、教科担任制のメリットを実感していることで、スムーズな学校運営に寄与できるものとなります。新宿区教育委員会の「前倒し」を評価し、積極的な取組を期待したいものです。



【明海大学客員教授 釼持 勉】

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