Vol.48:小学校高学年の教科担任制考7

 新年度が始まり、小学校高学年の教科担任制も、多くの自治体で大きく動き出しました。各学校の独自性を発揮して、学校規模を考慮のうえ、導入・推進の模索の段階から、学校づくりを機能させる段階になってきています。

 過日、映画『シャイロックの子供たち』を鑑賞しました。融資の在り方と銀行員との関わりには、現実に「あり得る」と思わせるような場面が多々ありました。手を染めてはならないとわかっていながら悪への手招きをしてしまったり、やむを得ず悪事の方向に進んでいってしまったりする様子を整然と描いていました。

 学校現場では、新規採用教員が意欲的に学級経営、児童理解に向けて精いっぱい取り組んでいます。そんな若い力の芽を育てる職場が、学校でなければなりません。

 『複式学級がある小規模校の教科担任制導入への試み』
 過日、和歌山県白浜町立白浜第二小学校の研修会に参画しました。
 複式学級がある中で、どのようにしたら学校の独自性を発揮し、教科担任制のメリットを生かすことが可能なのかなど、興味深い協議が展開されました。
 教師たちは前向きに、自分は「何の教科を担当したいか」「どのような方法が可能なのか」など意見を出し合い、ホワイトボードにさまざまな希望が書き込まれました。

 私は、白浜第二小学校は、複式学級がある中でも、先生方の士気により教科担任制を機能させることができると判断しました。

 西田拓校長先生が教科担任制のコンセプトを送付してくださいました。概要は次の通りです。

①授業改善……1単位時間での授業完結、学年をまたがる授業の系統性の重視
②児童理解……生徒指導、保護者対応、学級経営をチームで実施
③中学校への接続……個別最適な学び、自己肯定感・自己有用観の醸成
④働き方改革……業務の見直し、働き方相互理解、教師間の関係性の質向上、組織的活動

 令和5年度からすぐに実施するために、高学年の複式学級が解かれた段階で進めていくというロードマップを作成し、そのうえで実施を進めていく方向性が示されました。
 低学年・中学年・高学年がセットで実施可能な体育と音楽、学年交換で実施可能な道徳等で推進し、道筋を確実に進めていくことで、教科担任制の本格的な実施につなげていきます。

 規模にかかわらず前向きに進めていく白浜第二小学校の行く末に期待大です。



  【文責:明海大学客員教授 釼持 勉】

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