Vol.27:日本の先生の働きすぎ
OECD(経済協力開発機構)の「国際教員指導環境調査(TALIS)」(2021.9.16発表)によると、前回2019年に引き続き「日本の先生は働きすぎ」という結果が出た。
46か国を対象に実施された中学校教員のデータを概観して考察する。
日本の中学校教員の年間労働時間は1705時間で、データのある24か国中6番目に長く、平均より130時間長い。
労働時間に含まれる授業時間の割合は、データのある22か国平均の44%より低く36%で、4番目に低い。なお、2019年度の別の調査によると、日本の教員の部活動など課外活動が占める割合は13%と最も高いという報告もある。
今回の調査の日本の結果について、OECD教育・スキル局長のアンドレアス・シュライヒャーは、次のようにコメントしている。
★1:教室外でも子供と関わる時間をもつのは日本の教育制度の強み。
★2:事務作業や時間のかかりすぎるテストの採点など、無駄を減らしていくべきだ。
★1については、日本の学校教育が評価されていると、嬉しい気がする。
が、一方で、新しい課題が生じると児童生徒に関わる事柄だからと学校に丸投げされるような風潮には,一考を要するとの声もある。
観光旅行と学校訪問を兼ねて家人と二人で、海外旅行を十数か国したことがあり、外国は、教師のすることが明確になっていることを実感したる。
その中で、アメリカの先生は、授業が終わると休憩室でコーヒーをゆったりと味わっていたことを、羨ましく思った。
また、ドイツの中学校では、煙草を吸う生徒に対してこれは家庭教育の問題で、教師は授業が仕事だからと、特に注意を与えなかったことに驚いた。
★2については、事務作業に時間がかかりすぎるとの指摘は、その通りで、児童生徒の指導(授業)に専念できるように「働き方改革」を進めていくことが不可欠である。
しかし、テストの採点を無駄と考えることにはいささか抵抗がある。
テストの採点や作文やレポートの評価を教師以外の人に委ねるという発想もあるが、これらを通して児童生徒の学習情況や反応、進歩の様子を見取って、それぞれに応じた指導・支援をすることは不可欠(教師の本務)であると考える。
働き方改革を進め、校務分掌の見直しを図り、「授業の準備」、「授業の実施」、「評価」を優先し、十分な時間がかけられるようにしたいものである。
その意味で、教師は「授業」に、もっともっとこだわりをもつべきだと考えるが、いかがであろうか。 (教育調査研究所 小島 宏)