Vol.30:コロナ禍で中止の「クラス会」に思う


 前の東京オリンピックの翌年、昭和40(1965)年に、東京都の公立小学校で教師としてスタートしました。

 初めて担任したのは3年2組の32名で、4年、5年、6年と4年間担任し、卒業させました。この頃は、学級編成替えが少なく、一人の教師が長く担任することは珍しくありませんでした。
 この4年間は、校長先生や教頭先生、同学年の先生、先輩の先生方から「手取り足取り」で、学級経営の仕方、子どもの褒め方や叱り方、生徒指導(生活指導)の仕方、教科指導(授業)の基礎・基本、保護者との関わり方などについて、具体的に、泣きたくなるくらい厳しくご指導していただきました。
 当時は、子どもへも、同僚間の学び合い(特に、ベテランから新人への指導)も、失敗や不足を指摘し、厳しく指導するのが普通の時代でした。

 何十年もたった今でも、先輩方の顔を思い浮かべ、天を仰ぎ感謝することがあります。 当時の先生は、「子ども」にとっての先生であるとともに、私のような「新米教師」にとっても先生であったのです。

 話は変わりますが、最初に担任した子どもたちとのクラス会が今でも続いています。子どもたちは、還暦を超え65歳となり、孫のいる年齢になっています。

 上野の東京都美術館で、クラスの中で書家になった友人の作品展を鑑賞し、そのあとで上野駅近くのレストランで談笑することを常としています。
 クラス会では、昔の小学校時代にタイムスリップして、「ハセ」「ナッちゃん」「ふうちゃん」「オヤビ」「大ちゃん(体が大きいので)」「ジュンちゃん」「あっちゃん」「ハム子(公子)」「たかちゃん」「こんちゃん」「ささ」「まっちゃん」などと愛称で呼び合い、わいわいゲラゲラの時間を過ごしています。
 そんな様子を見て、私は幸せを感じ、生きるエネルギーをもらっています。教師冥利とはこのようなことをいうのかもしれません。

 ところが、コロナ禍で、持病のある私の感染を心配し、ここ3年間はクラス会を控えています。本当に、優しい子どもたち(65歳ですが)です。コロナ禍が早く収まって、クラス会が再開できることを、首を長くして待っています。今は、教え子たちとの楽しい時間を共有できるように、健康に留意しています。

 現在、学級経営や生徒指導、授業に悩み、苦労している若い先生方、その姿に子どもたちは何かを感じていますよ。目の前の子どもたちのために、「子どもたちを育てること」と、「自分の教師力を高めること」に全エネルギーを傾注してください。
 ただし、「健康第一!」で、「無理をしない!」ようにしてください。

 若い先生方、困ったことや悩みがあったら先輩に相談してください。きっと、あなたの困ったことや悩みに、親身になって応じてくださる先輩が見つかると思います。

 先輩の先生にお願いがあります。若い先生から困ったことや悩みごとを相談されたら、どうか応じてあげてください。
 ただし、今の若い人は、苦言や厳しい指導を受けると、がっくりと落ち込んでしまう傾向があります。いいところをたくさん褒めて、そのうえで、「こういうところを直すと、もっともっとよくなりますよ」と、優しく教えてあげてください。よろしくお願いします。

教育調査研究所研究部長 小島 宏

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