Vol1:紙とデジタル(2020.10.11)

小中学校の「デジタル教科書」の活用

 日本人の勤勉さと、工業生産と技術と物流、平和の行動は世界に誇れるものです。ところが、ICT活用の遅れなどで今やデジタル後進国との指摘を国内外から受ける状態にあります。
 このことを背景にして、平井卓也デジタル改革担当大臣は、10月6日の閣議後記者会見で、「小中学校の教科書を原則デジタル化」との見解を示しました。既に、萩生田光一文部科学大臣には提案しているといいます。「紙ベースの教科書を子供が何冊も抱えて移動するより、パソコン1台の方が効率性を考えてもプラスだ」という理由はやや説得力に欠けるかと思います。
 それよりも、文科省のGIGAスクール構想の「紙ベースの教科書とチョークと黒板の情報伝達型(教え込み)授業から、子供が主体的に学ぶ授業に変えたい」という方が説得力があります。そして、「これまでの我が国の教育実践と最先端ICTのベストミックスを図ることにより、教師と子供の力を最大限に伸ばしたい」という方向性にも納得がいきます。
 文科省科学技術・学術総括官の合田哲雄氏の「一斉授業か個別学習か、履修主義か習得主義か、デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかと言った二項対立の発想を脱して、子供たちの状況に応じて適切に組み合わせて生かすハイブリッド教育により、個別最適な学びとつながる協働的な学びを実現することが求められる」(『教育展望』2020年10月号pp.49~50)と言う見解が、今後の方向性を示していると思います。
 現在の小中学校では、紙ベース教科書が主体で、デジタル教科書は一部で試行されている状況です。だからといって、デジタル教科書一辺倒にすべきとか、いや紙ベース教科書のままででよいのだということではなく、学習内容、子供の発達段階などに応じて、両者を適切に組み合わせていくということになるかと思います。
 このことについて、脳神経学者メアリアン・ウルフ氏の「特に読書では、紙の本は「深く読む脳」を育てることにつながり、デジタル媒体の読書は「速読」に向くが短絡的になり得る危険がある」と言う興味深い見解があるので紹介します。(読売新聞2020年7月12日朝刊9面)
 勝手な解釈が許されならば、紙の本の読書は「論理的思考」を育てるのに、デジタル本は「直感的思考」を育てるのに適しているということになるのでしょうか。
 教科書を使って学ぶのは子供たちで、「未来を自分らしく生き、社会を支え創り上げていけるように、よりよく育てる」ことを学校は保障していかなければなりません。
 ところが、今、学校はある意味で社会から半歩遅れてしまっています。デジタル教科書の活用をめぐる議論をきっかけに、ICTやAIの活用、デジタル環境の整備、情報活用能力の育成などについて、国政・文部科学省も、地方自治体・教育委員会も、学校・教師も連携して進めていってほしいと切に願う次第です。

(H&M)

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