Vol.05:私の気になる1冊(2020.12.1)

私の気になる1冊(1)

 松浦弥太郎・野尻哲也著
「はたらくきほん100 ―毎日がスタートアップ―」
 
 コロナ禍の困難な状況への対応を通して、学習指導(授業)の在り方、働き方について考える機会があった。そのような中で書名にひかれて本書を手に取った。
 
 本書の1部「はたらくきほん100」の前書きに「ビジネスとは利益を出すことであり、仕事とは、世の中の困っている人を助けることである」、「(僕は仕事のために)工夫と発案、努力と学び、責任と約束、チャレンジを、日々繰り返してきた」と、さらに「そんな日々は、正直、失敗だらけで、自分のいたらなさで、思うままにいかないことだらけだ」、しかし「失敗や思うままにいかないことは、(…)もうワンステップ成長できるチャンスである」と意味づけ、「成功の反対は失敗ではなく何もしないこと」と含蓄のある言葉で結んでいる。
 そして、見開きで「最新を知っておく」「書くことは考えること」「面倒くささの中に宝物が眠っている」「問題は先送りせず、いま解決する」など100の基本を簡潔に解説している。
 企業に勤務する人を対象にしているが、教師として、管理職として、子どもの教育に関わる仕事をする際のヒントをたくさん見つけることができる。100の基本を、教育の視点から見直し、クリティカルリーディングすることをお勧めしたい。
 
 また、第2部「リーダーのきほん100」の前書きは、「リーダーのきほんは(…)日々の仕事における、感謝の方法と言っていいだろう」とし、「誰に対しても、出来事に対しても、とことん感謝をし続けることが、仕事だけでなく、これからの長い人生における、人間関係の『きほん』であり、問題解決のヒント」になると提言している。
 そして、第一部同様に、「ひとりよがりにならない」「経営とは、人を愛すること」「問いへの答えは正しく、誠実に」「教え方は面白く」「フェアな評価を」「短く叱り、たっぷりほめる」などリーダーの基本100を示している。
 リーダーの基本も、管理職、教務主任や生徒指導主任、学級担任や教科担当が「子どものためになる学校運営と教育活動」を進めるリーダーシップの発揮に役立つはずである。
 
 本書の内容を即実行するという発想ではなく、これら200の基本を参考にして、自校流、自分流の「働く基本100」「リーダーの基本100」にすることを期待するものである。
 なお、本書には目次も索引もない珍しい編集になっている。全体をざっくりと俯瞰し、必要に応じて該当項目を読むことになる。
 
B5判 432ページ 本体1500円+税
マガジンハウス社

一般財団法人教育調査研究所研究部長 小島 宏

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