Vol.14:小学校高学年の教科担任制考

小学校高学年の教科担任制考


 映画『騙し絵の牙』が好評である。愉快、爽快、痛快だという評である。物を作り上げる楽しさ、ならびに自己の考えを実現していくまでの苦難を乗り越えたときの喜びは爽快そのものである。

 今回は、学校教育において2022年度から導入される予定の「小学校高学年の教科担任制の導入」(以下、教科担任制)を考えてみたい。全国で実験校や指定校での先行実施を受けて学校現場はどんな準備をすればよいのか。その準備段階の学校のあるべき姿と実践を報告する。

教職員への教科担任制の導入に対しての当事者意識を高めること
 実験校と指定校任せで、果たして2022年度からの「教科担任制」はスムースに動き出すだろうか。現在取り組んでいる学校の事例も紹介しながら考えてみたい。

 いちばん機能しないのは、当事者意識がなく、高学年のこととして学年レベルで推進し、他の学年との共有化が図れておらず、それにより固定化した学年編成となって「教科担任制」の青写真が描けない事態に陥ることである。このような学校がそうとう多いのが現状である。中には「教科担任制」について全く取り組んでいない自治体も存在する。学校差、格差社会がさらに広がることが危惧される。

 当事者意識を高めていくためには、管理職のマネジメント力が発揮されて、教職員に「教科担任制」のメリット、デメリットを共有したうえで、教師一人一人の授業力向上を目ざして「教科担任制」に取り組む学校づくりを推進することである。
 例えば、1学期は交換授業を中心に、2学期は一部単元で「教科担任制」を導入、3学期は「教科担任制」全面実施をしていくというように、段階的な実践を目ざして2022年度からの「教科担任制」にシフトしていくなどが考えられる。

 また、「教科担任制」は学校規模によって対応が違ってくる。規模の大きい学校では、1年単位から数年にかけて、安定的な運営ができるようにしていく体制をとっていく。ティーム・ティーチングを積極的に取り入れ、専門性に携わる教師を育成していく段階を重視して、授業力向上を目ざす実践もある。そのことが「教科担任制」成功の鍵を握っていると思われる。

 学校現場は、今のままで、機能する「教科担任制」を導入することができるのだろうか。人事の配置の必要性や学校内での新たな施策に対する抵抗もある。
固定化した学年経営へシフトする課題や、教科の専門性のあるべき姿、学年経営への本格的指導、各教科の評価観の共有化、保護者への説明責任などをいかに果たしていくかも、学校の責務として求められる。
 また、行政は教員加配措置などの人事における対応をいち早く進めていくなどして、「教科担任制」の円滑な導入に向けて帆をあげなければならない。

【ペンネーム 映画を教育に】

  

まなびの小径

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